navylight’s blog

当世のアイドルと前世のニューウェーブ

世界には愛しかないbyボブ・ディラン

【amazon限定表紙/amazon限定絵柄別冊付録ポスター付】B.L.T. 2016年8月号amazon版


ラジオで初解禁されてから先日のテレ東音楽祭でさらに火がつき、ひたすらこの曲のラジオの録音を聴き返している。

改めて欅坂46「世界には愛しかない」について考えたい。

「世界には愛しかない」、この歌詞のルーツは一体なんなのだろうか。
タイトルからまず分析していきたい。


ボブ・ディランの歌詞に「愛しかない、それが世界を動かしている」という一節がある。
Love is all there is, it makes the world go 'round Love and only love, it can't be denied
Bob Dylan「I threw it all away」より
そこで気付いた。

武田鉄也じゃなくてディランだった。
解禁時の記事で母に捧げるバラードのような曲の構成だと感じたのだが、
語りの後にやってくる美しいメロディーラインのサビ、これはもうボブ・ディランである!

そもそも海援隊母に捧げるバラードだってフォークソングなんだからボブ・ディランに影響を受けてないわけがない。

というわけで世界には愛しかないの楽曲的ルーツの根本にはボブ・ディランが有ったと考えるのは至極妥当なのだ。
ちなみに「それが僕のアイデンティティー」という歌詞があるけれど、みうらじゅんボブ・ディランを重要なモチーフとして使った作品に「アイデン&ティティ」というのがある。
ますますボブ・ディラン染みてきた。


AKB48においてはスタイルのみの懐古にとどまっているフォークソングというものが、この欅坂46の曲においては、どちらかといえばフォークソングの"信念のようなもの"の方を継承している所がとても興味深くある。


正直な話AKB48という現行のグループの新曲に、どこかのリユニオンバンドが昔を懐かしむような歌詞ばかり書いている秋元康はどうかと思うのだが、この二つの価値観が一人の作家に同居しているという点は、割と見所のある点ではある。


この曲の歌詞のフックはいくつも有るが、個人的に特に気に入っているのが、
前回はただ一人選抜ではなかった長濱ねるがおそらく語っている一節
※7/12追記
この一節は長濱ねるではなく菅井友香であった
「夕立も予測できない未来も嫌いじゃない」

この部分である。
一番のサビ前の
「もう少ししたら夕立が来る」
を受けての一節だ、とても心を奪われる。


実はこの夕立というのが、この曲が実は列記とした夏曲である事を証明する部分なのだと、この文章を書いている途中でちょうど夕立が降ってきて気付いた。
実際に夕立に当たるのは気分が悪かったが。

夕立という言葉がキーになる秋元康の過去の作品にSKE48の名曲「夕立の前」がある。

夕立の前(研究生)

夕立の前(研究生)


使われているモチーフは「世界には愛しかない」と共通する部分も多いのだが、
SKEの「夕立の前」と「世界には愛しかない」が根本的に異なっているのは「夕立の前」における"夕立"というのは逆境としての色合いが強く、そこにどう立ち向かっていくかという事がテーマだったと思うのだが、
「世界には愛しかない」においての"夕立"は、過ぎ去るものとしての前提があり、そこを通過した後に主眼があるという点である。
ここに大きな秋元康の描く世界の変化があって、かつての
逆境にどう立ち向かうか」ということに加え、
どう世界と対峙していくか」ということが非常に大きな要素として現れてきている。
例えばNGT48の「Maxとき315号」なども最近の秋元康のそういった方向性が見られる作品の代表的なものだ。乃木坂46の「君の名は希望」辺りから特に現れはじめた作風だと感じる。
さらに、「世界には愛しかない」はそんな中でも非常に能動的な歌詞だ。

表題にインパクトがあり過ぎてつい忘れてしまうのだが、夕立だけでなく、セミ、真っ白な入道雲など他にも夏らしいアイコンが歌詞に散りばめられている。
だいたい"夏の青い空"という歌詞が冒頭から出てくる。

この曲は夏の歌でもあったのだ。

嬉しくもあり、残念でもあるのだが、
この夏、この「世界には愛しかない」を超える夏曲というのはもう出る事はないだろう。

なんといってもテレビで見られる、あのステージの真ん中を駆け抜けてくる平手友梨奈のパフォーマンスが素晴らしい。

追記:
語りの後にメロディが入るという点で、母に捧げるバラードボブ・ディランと考えてきたが、またも一つ思いついてしまった。
尾崎豊の「15の夜」である。
そういえば平手友梨奈は15歳であった!!
これはまた別の機会に考える必要があるかもしれない。