navylight’s blog

当世のアイドルと前世のニューウェーブ

欅坂46「世界には愛しかない」の懐古的現代感

UTB+ (アップ トゥ ボーイ プラス) vol.32 (UTB 2016年 07月号 増刊)

欅坂46の新曲「世界には愛しかない」がついに解禁された。
こんなに秋元康が仕掛けてきてるのも最近では珍しい。
やっぱり昇り調子の環境で活きてくる人だと思う。
秋元康に再生工場としての機能を期待するのは間違えているのかもしれない。
「世界には愛しかない」を聴いてなんとなく思い出したのが海援隊の「母に捧げるバラード」。詩の後にサビの歌がくる構成がどことなくあの曲を想起させた。
他にも有名な曲の中でそういう構成の曲はもっと沢山あるのかもしれないが。
欅坂46の曲といえば過去の歌謡曲やフォークの再解釈的なスタイルが大きな特徴なのだけれど、
例えば「世界には愛しかない」は「母に捧げるバラード」のアップグレード版と言ってもいいのかもしれない。
AKBの「翼はいらない」が過去のフォークの様式の再現をした曲ならば、「世界には愛しかない」は過去のフォークの形式だけ借用し、近代的に聴かせているという、この二項対立も面白い。
というかこの二曲をほぼ同時に書き上げる秋元康の二面性というのはやはり注目すべきだと思う。
前作「サイレントマジョリティー」である種の"拒絶"を訴えていたのが、今回は"許容"という緩急の付け方がまた素晴らしい。
欅坂46が良い曲を出せば出すほど、他のアイドルにとっては情勢は厳しくなっていくだろう。
数年前のアイドルがAKBとそれ以外だったように、乃木坂欅坂とそれ以外になるような気もして、それは少し恐ろしくもある。