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「翼はいらない」の歌詞と北原白秋

44th シングル「翼はいらない」Type A 【通常盤】

去年からグループのパブリックイメージでもあり毎年恒例だった、大勢で水着で歌うスタイルの曲をリリースしなくなったAKB48
そもそもこの6月に出るシングルというのはいわゆる選抜総選挙の投票券が付くということで、結果的にその年一番の売り上げのシングルになることは確約されている。

「翼はいらない」は「365日の紙飛行機」の延長線上にある作品で、いわゆる普通に生きる人にスポットを当てた歌詞になっている。
以前2011年ごろ、一番AKBが盛り上がっていたときにラジオ深夜便かなにかに出ていた秋元康が、一番好きな歌詞は「この道」の詩だと言っていて、その当時はあんなに派手な歌詞を書いてる人が何を言ってるんだと思ってしまったのだけれど、今回の「翼はいらない」を聴けばなんとなくそれも頷ける。

この道 作詞 北原白秋

この道はいつか来た道
ああ そうだよ
あかしやの花が咲いてる

あの丘はいつか見た丘
ああ そうだよ
ほら 白い時計台だよ

「この道」はシンプルなだけあって色々な解釈があるのだろうが、物事の変化について歌っている点が、「翼はいらない」と根底で通じている気がしたのである。
思えば美空ひばりの「川の流れのように」だってその発想の原点は「この道」にあるのかもしれない。

「翼はいらない」は数年前にドーム公演という結成当初の目標を果たしてからの、どこを目指せばよいか分からなくなっていたAKBを象徴するような曲である。
最初この曲は、夢をもたない世の中の大多数の人に向けた歌だと思っていたのだけれど、それは違った。
「翼はいらない」で秋元康は、大きな飛躍が無くとも歩き続けることが大事なのだと、そう言いたかったのではないだろうか。
確かにこれからのAKBは今までみたいにどんどん大きくなって新しい事をやってというグループではなくなっていくと思うし、ハッキリ言えば何年か前からそれはもうすでにそうなのである。
贅沢を言えばもう少し早く出してほしかったシングルなのだけれど、こういった意思が歌詞をもって大きく示されたことが、これからに繋がっていくと思う。

そして、これはAKBに限ったことではなく、世の中に対するメッセージでもあると思う。
何十年も前の高度経済成長やバブルの頃の飛躍的な発展が忘れられず、未だにそういった大きな飛躍ばかり求めてしまっているこの国の大人たちへのメッセージでもあると思う。
さらにこの曲は、学生時代を終えて数年が経ち、昔ほど成長が実感できなくなってきた自分のような若者にもとても響く歌詞だ。