夢の名残
NMB48の最新シングル「僕はいない」。
渡辺美優紀の卒業シングルである本作の劇場盤CDには表題曲である「僕はいない」、そして山本彩の作曲による「今ならば」、最後に渡辺美優紀のラストソロ曲となる「夢の名残」が収録されている。
その中でも特に「夢の名残」という曲について紹介したい。
渡辺美優紀のソロというと、これまで「わるきー」や「やさしくするよりキスをして」のような、ブリブリのアイドル曲だった。
しかしこの「夢の名残」は、そんなアイドルソングの喧騒から解き放たれたような、とても落ち着いた詩的な楽曲である。
自身のアイドルらしいキャラクターというのを確固としていた渡辺美優紀が見せる素の表情。
「夢の名残
ひとみ閉じれば
過ぎた日々が浮かんでくる
眩しいくらい輝いていた
記憶のすべても月のかたち」
夢の行き先を、
三日月から段々と満月へと変わっていく月になぞらえた歌詞。
とても情緒的である。
しかし、この歌詞を聴いて思うにこの「夢の名残」というのは、渡辺美優紀自身の夢というよりは、どちらかといえば彼女を見ていたファンや秋元康の心情なのではないだろうか。
最後の一節
「待っててほしいよ夢の続き」
という歌詞は秋元康なりの渡辺美優紀へのメッセージという気もする。
本来のところ渡辺美優紀が今後どういった未来を歩んでいくつもりなのか、とかそういった事は全く分からないのだけれど、
「夢の名残」の抽象的な詞を歌うその声こそが、何よりも本人の心情をハッキリと表現している。
欅パーソン、スキャット後藤
現在放送中の欅坂46のドラマ「徳山大五郎を誰が殺したか」。
番組を盛り立てる重要な要素として挙げられるのが不気味だけどどこかユーモラスなBGMの存在。
そんな「徳山大五郎を誰が殺したか(以下 徳山大五郎)」の音楽を務めるのがスキャット後藤である。
欅坂46との関わりとしては「徳山大五郎」の音楽以外にも「世界には愛しかない」の特典映像で上村莉菜の個人PV「効果音ガール」(TYPE-C収録)のBGMなども手がけている。
「徳山大五郎」の音楽の中では、子供の声による「ランランラン」というコーラスの曲、アメリカのカルトバンドResidents、はたまたThe Doorsあたりを連想させるような曲、キングクリムゾンのようなフリージャズ風味の曲等が印象に残るが、スキャット後藤氏はどのような所に音楽的な下地を持つ人物なのだろうか。
スキャット後藤氏のホームページ:
http://www.cutecool.jp
スキャット後藤氏はフリーランスの作曲家で、
テレビバラエティのBGMから、CM、映画、ゲームと様々な場所に楽曲を提供されていることがわかる。
以前「徳山大五郎」と同じくテレ東で、金曜日のドラマ24で放送されていた「殺しの女王蜂」の音楽も担当されていたらしい。
深夜ドラマの劇伴を数多く手がけられている。
個人的に「とんねるずのみなさんのおかげでした」の「トークダービー」のコーナーのBGMなんかは気になる所だ。わざわざあのコーナーのためにBGMが制作されていたということも驚きである。
プロフィールを眺めていると、そのキャリアのスタートはスーファミなどのゲーム音楽だということで、そもそも打ち込みを得意とされる方なのだろうか。
では、スキャット後藤氏はどんな音楽を聴いてきたのかというと、彼はnoteもやられていて、その記事の中で幾つか手持ちのアナログレコードを紹介しているものが有った。
スキャット後藤氏のnote:
https://note.mu/scatgoto/n/n88bc5b090161
プログレ、アニソン、山下達郎からバート・バカラックと非常に幅が広い。
スキャット後藤氏のインタビュー:
http://kohrogi.com/?p=6387
さらに、こちらの「となりの関くんとるみちゃんの事象」というドラマの劇伴を主軸にした「こおろぎさんち」というサイトのスキャット後藤氏のインタビューによると、
彼の劇伴のルーツはなんと、大阪の心斎橋二丁目劇場で見たダウンタウンや千原兄弟の漫才・コントの間合いや演出だという。
お笑いやバラエティ番組を見てきた経験が、劇伴をやるうえで非常に重要になっているとのこと。
非常に変わった作曲家さんである。
「徳山大五郎」の不気味だけれどどこかユーモラスなBGMのあの感じの秘密が少し分かった気がした。
須藤凜々花、ショートカットの夏
NMB48の渡辺美優紀卒業シングル「僕はいない」のカップリングに収録されている、須藤凜々花初のソロ曲「ショートカットの夏」。
須藤凜々花(愛称:りりぽん)は将来の夢が哲学者で今年の3月には自身初の哲学書「人生を危険に晒せ!」を発表し、CSでは麻雀の冠番組を持ち、「ドリアン少年」というシングル曲ではセンターも務めていた、というドラが乗りまくっているNMB48の期待の若手メンバーである。
そんな須藤凜々花がついにソロ曲を出すということで、どんな曲なのかと聴いたら、まさかの爽やかな王道アイドルソングである。
正直歌詞もかわいらしいが他愛の無いものだ(それとも須藤であればこの曲も哲学的に解釈しているのだろうか)。
これまで須藤がメインをはってきた曲というと、
「ニーチェ先輩」「ドリアン少年」など須藤の得意分野である"哲学"を肝としたキワモノ的な歌詞が多かった。
そんな須藤が何故王道な歌詞のアイドルソングを歌うのか、これはやはり亜流から主流へと須藤凜々花が変化を遂げる第一歩なのではないだろうか。
冒頭に書いた通りこの曲が収録されたシングルのメイン楽曲は「僕はいない」という、これまでグループのメインを張ってきた渡辺美優紀の卒業シングル。須藤が次代を担うにはこういった王道アイドルソングを歌える姿を見せるという事は最重要課題だったのかもしれない。
亜流の須藤が主流に寄せる必要があったのか、亜流と呼ばれているものを主流と呼ばせるように変えるのが須藤ではないのか。
そんな事も思ったりするが、やはり須藤はここで王道もできるのだという事を見せる必要があるのだろう。
しかしこれまでも須藤がそういった王道アイドルな側面を全く見せてこなかったという訳ではない。
自身の冠番組「トップ目とったんで!!」では毎回麻雀バトル終了後、自身お気に入りのアイドルソング(ももクロからハロプロと、48グループに限らず様々なもの)をカラオケで歌うというコーナーがある。
麻雀参加者を目の前にして歌うそのカラオケのグダグダっぷりは目に余るものがあるのだが(そこが面白い)、ここでの須藤はまさに王道アイドルの様相を呈していた。
昔タモリが「笑っていいとも」のオープニングで司会者が歌うのは不自然極まりないということで、恒例だったオープニングの「ウキウキウォッチング」を歌うのを辞めたが、アレは不自然だからこそよかったのである。
この番組での唐突に始まる須藤のアイドルソング独唱も全く不自然だ。
かつて「われめでポン!」で勝負を終えた加賀まりこや蛭子能収がひとり歌い踊って番組を閉めるなんて事があっただろうか。
少し話が逸れてしまったが、
とにかくこの「ショートカットの夏」の須藤の歌唱には、これまで「トップ目とったんで」で様々な麻雀の腕のたつ著名人達の前で王道アイドルソングを披露してきた経験の蓄積が現われている。
ドラゴンボールで亀仙人に訳のわからない修行をやらされていた悟空とクリリンが天下一武闘会で、亀の甲羅を外して修行の意味に気づくかのようだ。
「寄せるさざなみ
ふいに足をとられて
コマ送りのように
君はコケてしまった」
という歌詞があるが、須藤はダンス中よくコケる。この曲を歌う時はコケないことを祈るのみである。
千の病を持つ男
80年代にナゴムレコードというインディーレーベルを主宰し、現在は演劇界でも知られるケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下ケラ)が率いたバンド「有頂天」のキャニオンレコード時代の作品がボックスで再発されるということで、その代表作のひとつである「千の病を持つ男」という曲を紹介したい。
「千の病を持つ男」は元々インディー時代の楽曲なのだが、キャニオン時代でいうとライブアルバムの「SEARCH FOR 1/3 BOIL」に収録されている。
有頂天は基本的にニューウェーブサウンドのバンドで、この曲も例に漏れずファンシーなシンセが鳴り響き、疾走感があるメロディックでポップな曲調だ。
が、歌われているのは
「ほら見てよこの私 ヤマイ
いつでもヤマイ ヤマイが踊る」
という異端を半ば自虐的に誇示する歌詞。
当時現在とは比べものにならないほど肩身の狭かったであろうサブカルチャーに根ざしたバンドであった有頂天のテーマソングのような歌詞である。
聴き流してしまうとよくわからないかもしれないが、かなりブラックな内容。当時の流行り言葉でいうと「ほとんどビョーキ」みたいな感じだろうか。
意味がありそうで無さそうでありそうな歌詞というのがとても魅力的だ。
「とかくこの世はオバカサン
細胞のテキオウカクサン
今日も私の空アカイ はねかえる体の涙」
という締めの歌詞、自分が異端だという事を認めつつ世間にも「とかくこの世はオバカサン」と舌を出すこの態度が有頂天の魅力かと思う。
この曲の作詞はボーカルを務めるケラによるもので、
有頂天に影響を受けたバンドというのがゼロ年代初頭を中心に少し盛り上がっていたけれど、ケラのこのセンスを凌ぐコトバを持つバンドというのは正直あまり居なかったように思う。
歌詞なんてなんでもよさそうなフリをしながら、正面から日本語の歌詞と向き合っていた所こそ、有頂天が他のニューウェーブバンドと一線を画したところではないか。
ニューウェーブバンドだからといってサウンドばかり気にせずに歌詞にも耳を向けて欲しい、有頂天とはそんなバンドである。
ツギニツヅケというお笑いライブ
大好きなマッハスピード豪速球が出ているということで、新宿バッシュというライブハウスで行われている「ツギニツヅケ」というお笑いライブを見てきました。
マッハスピード豪速球の他に、スーパーニュウニュウ、曇天三男坊、世界少年、中村涼子、ロングロングという面子によるユニットライブ。
今回で始まって6回目らしいです。
普段はAマッソとヤングウッズがいるというが、今回は休み。
それぞれの本ネタ
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それぞれの1分ネタ
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マッハスピード豪速球による企画
という構成でしたが、特に企画が爆裂に面白かった。内容はマッハスピード豪速球の二人の様々な特技に他のユニットメンバーが挑むというもの。
三種の種目でマッハの二人にユニットメンバーが立ち向かったのですが、
まず一試合目は坂巻さんによる「爆音食べる音対決」これは咀嚼音が異常にうるさい坂巻さんが得意とする勝負。対戦相手同士で互いにどちらの咀嚼音がうるさいか競いました。
そして二試合は「目隠し叩いて被ってジャンケンポン」、これはガン太さんの特技で、無茶苦茶強かった。
咀嚼音で負けまくっていた坂巻さんと対照的にガン太さんの圧勝。
そしてそして、一番面白かったのが三試合目の「スイカの早食い」。
これはオーソドックスな勝負ですが、ルールは"皮まで全部食べきる"というもの。口を開けて何もなくなったら勝利ということだったのですが、スーパーニュウニュウの大将と中村涼子さんの二人にマッハスピード豪速球は惨敗。
負けまくって罰をうけたうえ、目標集客人数を達成できなかったマッハスピード豪速球はめちゃくちゃ不機嫌な態度でライブを終えていました。殴り合ってました。ていうか基本ガン太さんがボコられていた。
総括すると、
芸人のスープやスイカを吐き出しまくる姿が生で見れる貴重な体験だった。
このライブ、目標集客人数を達成し続けると、
最終回は浅草の東洋館のような大きな会場でやるらしいです。
次回の目標はマッハスピード豪速球が達成できなかった人数を繰り越して65人だとか。
マッハスピード豪速球がyoutubeの自分達のチャンネルでやっていたような企画が生で見れて、どの芸人さんのネタも面白く、良いライブでした。
まりちゃんのとと姉ちゃん
今週のとと姉ちゃんは雑誌作りから話のメインが移って、次女の鞠子が夢だったり色々な事との折り合いをつけて、結婚するまでの話だった。
正直ここ最近のとと姉ちゃんの中ではあまり面白くない話だったかと思う。
もともと小説家を目指していた鞠子が憧れの平塚らいてうと初対面し、原稿を依頼、それをキッカケに心動いた鞠子が結婚を決心という流れ。
結婚相手の水田からのアプローチへの答えをを先延ばしにしていた鞠子が夢や仕事と折り合いをつけて、優しい水田の両親から認められてめでたく結婚。
滞りない、滞りなさすぎる。
平塚らいてうのキャラも憧れの人という割には、あまり神々しさも無かった。
あれだけ雑誌の編集に厳しい花山が平塚らいてうの企画と原稿には何の文句もつけずにOKをするのも、仕事にシビアな花山のキャラの揺らぎが見えてしまって、さすがの花山も権威には弱いのかと、なんだか思えてしまった。
これから鞠子に何か起こる伏線ならまた話は変わってくるけれど、今週のとと姉ちゃんはなんだかつまらなかったです。
また来週以降の展開に期待します。
ボブディランは返さない人達
欅坂46のゆいちゃんずの新曲「ボブディランは返さない」も発表され、昔のフォークソングも聴きたくなってきた。
前回は秋元康周辺のフォークソングをご紹介しましたが、今回はゆいちゃんずの先輩に当たるフォークソングを歌うアイドル、つまり"ボブディランは返さなそうな人達"の曲にスポットを当てたいと思う。
今回は森高千里の「渡良瀬橋」。
アイドルが唄うフォークソングとしてはかなり早い時期の曲だ。
厳密に言うとフォークソングではないのかもしれないが、大きく括ると確かにフォークソングだと思う。
前回紹介した「岬めぐり」も然り、フォークソングはこういう御当地性っていうのも面白い要素だ。
南こうせつとかぐや姫の「神田川」とか。
森高千里って言えば最近だとtofubeatsなんかの若いミュージシャンからも再評価されていて、アイドルの将来の理想像的な感じもある。
ちなみにAKBの小嶋陽菜がオーディションで歌った曲っていうのがこの曲「渡良瀬橋」で、こじはるはラジオでも森高千里の「雨」が大好きと言っていて、ソラで歌っていた。
こじはるっていうのはAKBと昔のアイドルを歴史的に繋げて語る時には結構重要な人物だと思う。
松浦亜弥も「渡良瀬橋」はカバーしていたりと、色々なところで歌い継がれている曲だ。
アイドルとフォークソングっていうところでいうと、実はあのピンクレディーも元々はフォークデュオであるというのも興味深い。